『ベルリン・フィル〜最高のハーモニーを求めて〜』

ベルリン・フィル来し方と行く末についで現在*1の姿を見てきた。おぼろげながら、オーケストラの凄みってものが分かってきた気がする。

名門オーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の2005年のコンサート・ツアーに同行したカメラクルーは、移動の飛行機からリハーサル、メンバーのホテルの部屋、自由時間、楽屋までを縦横無尽に動き回り、偉大なるオーケストラの内側に潜入する。彼らの奏でる最高の音楽と素顔をとらえ、ベルリン・フィルの全容を映しだす。(シネマトゥデイ

http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tydt/id331468/

大まかに言って公演・リハ、ラトル・楽団員のインタビュー、公演都市のイメージ映像から成り立っている映画。シュトラウス交響詩英雄の生涯』とアジアツアーをシンクロさせることで印象的な映画になってるんだけど、ステロタイプなイメージ映像はともかく、ほかの部分については6回くらいのドキュメンタリーに分けても良かったんじゃないかと思うぐらい、それぞれ密度が濃かった。
ラトルの言葉は相変わらず含蓄に富む内容だった。そのラトルという指揮者がいながら「カラヤン時代の音を追いかけている」とか堂々と語る人もいるんだから面白くないわけが無い。
周囲への劣等感から楽器にのめりこんだ過去とか、演奏家としての生活と普通の生活のズレに悩む現在とか、人間的な部分がさらけ出されていて、やっぱり彼らも人間なんだよなと得心。
かと思えば、ツアー中盤、香港でのオフのすごし方にはそれぞれの趣味が炸裂していて、バランスの取り方にも個性が出ていた。少人数で録音を行う人たちや、持ち込んでいた自転車を組み立ててサイクリングに出かける人。
中でも、蝶について語るティンパニ奏者ライナー・ゼーガースの言葉がとても素敵だった。いわく、

「時々残念に思うんだ。
 僕らは世界のことをまだ知らない。
 知る前に崩壊してきているんだ。残念だよ。」

世界の終わりを見てきたかのような透徹した目で語られるもんだからたまらない。髭もポイント。
香港の次、台湾の場面では、公演を終えてホールの外に出てきたBPOの面々を迎える群衆の熱狂ぶりに鳥肌が立つ。そしてその夢のような熱から覚めた後、ツアー最後の地・東京で語られる年経た奏者の退団と、それを受け継ぐ若い血。この循環が伝統に繋がっていくんだろうな。そういうオーケストラとか楽団でしか生み出せない伝統ってのは何だか羨ましく思える。

シュトラウス英雄の生涯


2005年のBPO東京公演の様子。
映画に出てきた人の顔がちらほら見えて楽しい。

*1:と言っても3年前なんだけど