曇り一時晴れ/普通

早朝にISSは見えたけど、HTVは高度が低すぎたのか視認できず。よくよく考えれば予報通りに来るとも思えないので、もう少し粘ったら見られたかな。日の出後は終日どんよりした空模様。蒸し暑さがじわじわ戻ってきているようです。

おおかみこどもの雨と雪

ネタバレ含む感想。
おおかみこどもの雨と雪
(C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会

19歳の大学生花は、あるときおおかみおとこと運命的な恋に落ち、やがて雪と雨という姉弟が誕生する。彼らは、人間とおおかみの両方の血を引くおおかみこどもとしてこの世に生まれたのだが、そのことは誰にも知られてはならなかった。人目を忍びながらも家族四人で仲良く都会の一角で暮らしていたが、ある日、一家を不幸が襲い……。

http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tydt/id341770/

連目と流れていく命のつながり。今この瞬間、そこに命があって生きているということが淡々と(と言っても淡白という意味ではなく)綴られる2時間弱。映画には何度も見たくなるものと、良い意味で1度しか見られないと思うものがあるんだけど、この映画は後者だった。スクリーンの上に流れる命の一回性に敬意を払う意味で1度しか見られないなと。
父親が生きていても面白い話になった気がするんだけど、物語の主軸から父親を排除したってことはとりわけ母を描きたかったということなんでしょう。ただ、それでも父の影響はかなり重要な位置を占めているように思えた。旦那を失ったばかりの20歳そこそこの花が2人の子育て中にパンクしなかったのは父子家庭で育って幼いころから自分のことは自分で片付けるように育ったからなのかな、とか。「どんな辛い時も笑顔を絶やさなければなんとかなる」という父の教えもは何でも自分で片付けようとする花さんの人格形成にかなり影響を及ぼしてると思う。別に普通の家庭に育った女の子でもそれくらいのことは出来たのかもしれないけど、どうなんでしょ。
そういう意味では普遍的な母の強さを描いているわけじゃなくて、かなり特殊なケースではあるんだろうなぁ。都会暮らしに見切りをつけて田舎での生活を始めた後もそれまでと同じように、人には言えない秘密を抱えたおおかみこども2人との暮らしを守ろうとするんだけど、「笑ってるだけじゃ上手くいかない」というツンデレ爺さんが出てきて、田舎での生活の前提になる農耕を教えてくれる。これを契機におおかみこどもの秘密は隠したまま地域の人に助けてもらう形が出来、畢竟人間は一人では生きられないのだということが描かれていた。花さんは超人的ではあったけど、けして超人そのものではなかった。そうして生活がようやく安定したある雪の日、親子3人の疾走と呵々大笑は本当に気持ち良かった。
その後紆余曲折を経て訪れる雪と雨それぞれ不可逆の選択。それらを無理やり一言で表してしまえば美しかった。しいて言えば、花が雨を探しに山の中に入る前に雪を迎えに行くか逡巡するところが欲しかったけど、それがない合理的な理由がちょっと分からないな*1。旦那の影を追っていた?
とまあ細かいところで少し気になるところはあったけど、素直に良い作品だったなと思います。次回作も期待。

蛇足
  • 旦那が亡くなった後と雨失踪後の戸籍はどうなったのかなとか色々気になるけど、まあ上手いことやったんでしょう。
  • 一番気になるところは花たちの生活が軌道に乗るまでを支えたおおかみ旦那の貯金額。免許をとってすぐ働いたとしてそこまで貯まるものなのかな。
  • 旦那がおおかみおとこのカミングアウトする場面で背景が星空の微速度動画に。しかし映像的に嘘をつくなら天の川をいれればいいのに…と思った。それから東京で雪が降る時期に出産したことから逆算した季節の星空なのかな…と思ったけど、見覚えのある星空の配置が見つけられず。ぐぬぬ。それはそれとして、この場面は後の雪の告白と相まって本当に素晴らしかった。最初に書いたことと矛盾してるけどここだけでも何度も見直したくなる>

*1:雨も一言くらい声かけていけよと思うけど、母性の引力から脱するためと理解出来る。