宮本文昭ラストコンサート

3月29日の追加公演を見てきた。子供の頃からファンでしたとかそういったことは全くなく、「あんたの夢かなえたろか」で風笛を演奏してたのがこの人だってことと引退するってことを知って一度は見たいなと思って、ぶっちゃけ風笛が聞ければいいやって程度の軽い気持ちで見てきたんだけど、終わった後にはせめて還暦までやってくれないかなと思う自分がいた。
前半はピアノの塩入さんとデュオのような形で進行。1曲目ではピアノの人の横に女性が座ってたんだけどあれは何だったんだろ。*1
「風笛」の時には娘の宮本笑里さんが出てきて親子競演。あのメロディーの親しみ易さと包み込むような優しさは異常。本当にオーボエのために作られた曲なんだな。というか、宮本さんの吹くオーボエのためか。
で、そんな素晴らしい演奏の合間に繰り広げられるトークが長い長い。最初の4曲を終えた段階でトークとあわせて1時間近く経っていたような。まあ話も聞いてて面白かったからいいんだけど。
そして後半からバンドメンバー登場。2曲目の「G線上のアリア回転木馬〜My Favorite Things」ボサノバアレンジメロディーは個人的にハイライトの一つ。My〜の冒頭部、宮本さん一人で吹いてるところで初めて鳥肌がぞわっと立った。
その後はゲストコーナー。三宅一徳さんは知らなかった。雅楽とのコラボはもっと良くなりそうなになぁなんて思った。尺八と篳篥・笙とはあまり上手くかみ合ってなかったような。お琴と打楽器とはしっくりはまってたんだけどね。
渡辺香津美は以前から一度見たいと思ってたギタリストなんで嬉しかった。シェルブールの雨傘で軽く和んだ後に遠州つばめ返しの超高等技術の応酬に口開きっ放し。やっぱ上手い人の演奏を見るのは楽しい。
中西俊博さんは知らなかった。ウクレレのように小脇に抱えて爪弾いてたのが面白かった。勿論普通に弾いたヴァイオリンの音色も素敵。風笛の時にはステージに上げても全然無問題じゃないかと思った娘さんも、やっぱまだ発展途上なんだなとか思った。
溝口肇は言わずと知れた「世界の車窓から」の人。まさかと思ったらあのテーマ曲を演奏してくれた。2人がユニゾンで奏でるメインテーマに泣きそうになった。そして、そのメインからベースまで弾いて曲を盛り上げる溝口さんのチェロに聞きほれる。
鳥山雄司は言わずと知れたってほどではないかもしれないけど「世界遺産」の人という認識。オーケストラと比較しないでくれ的なことを言ってたけど、余計な修飾を排した2人のバージョンの方が本来の形なんじゃないかと思えたな。「蒼の薫り」は、鳥山さんがこれを書くまでオーボエの音域を知らなかったとかぶっちゃけてて笑った笑った。
その後本編終了まで3曲あったんだけど、カッチーニの「アヴェ・マリア」は29日のコンサートで一番記憶に残った演奏となった。一音一音が高次から降り注いで心の底のさらに最奥へと染み渡っていくようで。あの演奏がもう聞けないってのは大き過ぎる損失だと思う。DVDとか出ないのかな。
アンコール最後の「The Aim & the End」ではゲストも総出演。一人ひとり短くソロを取ってバトンを繋いで最後に宮本さんがそれを受け取るといった趣の演出。軽い気分で見にきてたはずの自分も何かいろいろこみ上げてくるものがあって半泣きでしたよ。
コンサートの合間、何度か絶頂期に止めたいといったことを語ってて、最初は自分を買いかぶりすぎじゃないのとか思ったりもしたけど、聞いてるうちに、「衰えないうちに止めたいという思いも理解できるくらい凄い/それにしてもまだやれるだろうに勿体ない」という相反する考えが自分の中で激しく葛藤してた。今は勿体ないって方が勝ってる。最初にも書いたけど、本当にあと2,3年くらいはやって欲しかったな。。。と、まあそんなことをいつまでも言ってても仕方ないんで、今後の活躍を祈りつつ、とりあえず今までお疲れ様でしたm(_ _)m

*1:というか5階席ってこともあって、中々演奏だけに集中して聞くのは難しかった。幸い周りに変な物音を立てる人はいなかったけど、席がステージの方を向いてなくて正面を向いてるもんだから首を傾けざるをえなくて非常に辛かった。あと、エレベーターがなく階段だけなのもお年寄りにはきついんじゃなかろうかしらね。