奄美・沖縄の旅(2)皆既日食観測@奄美大島

この旅2日目にして最大の山場。

朝焼け〜第一接触

寝入ってから2時間ほどで目が覚めたとき、やたらと綺麗な朝焼けが見えた。
黎明

寝ぼけまなこでテントからはいずり出してシャッターを切るとこんな色合いに。
それからまたうつらうつらと寝入って、朝食配布時間前にシャンと起床。
曇天の朝陽

皆既約4時間前。上空を薄い雲が覆い、その下を厚い雲が流れていくと言う空模様だった。
キッチリ晴れるか気がかりではあったけど、考えても仕方ないのでシャワーを浴び、朝食を受け取り腹ごしらえ。それから準備万端整え皆既の時間が僅かに長い漁港へ向けて徒歩で出発。
雲の向こうにあってなおじわじわ照りつける太陽の下、三脚やら望遠鏡やらの機材を詰め込んだ袋をしょって歩くのは想像を超えるきつさだった。何となくカメラよりはるかに重い銃器を抱えながらジャングルを歩いた旧日本兵のことに思いをはせ、自分は歩いてる最中に気づいたら死んでるタイプだなと確信。
ようやく目的地に着いてみると、漁港というだけあって見渡す限り堤防堤防堤防。唯一水平線が望めそうな高台はすでに先住者に抑えられていて、堤防の上も撮影機材を広げるには不十分。なので、結局漁港にあったタクシーに乗りこんで元の公園へと戻った*1

皆既日食

公園に戻ってようやく太陽を撮影。

既に第一接触の後で太陽がかなり欠けていた。何やってんだかねぇ自分はと思いつつも、太陽が欠けた姿に感動を禁じ得ず。マニュアルでピントを合わせつつ露出ブラケットでシャッターを切りまくる。

次第に上空の雲が厚くなり、ピント合わせが困難に。マニュアルじゃ無理だと諦めるころには接触がかなり進んでいた。

この頃になると、アストロソーラーフィルターでは対応できず、ND3.0フィルターに切り替え。ND3.0でも駄目ならND2.0と変更しながら、徐々に欠けていく太陽を撮影し続けた。


ここまで欠けると辺りはハッキリと暗くなり、遠くの方が茜に色づいてきた。
皆既前

太陽が写ったのはこのカットが最後。

そして第2接触
僅かながら期待していたダイヤモンドリングは結局見えず。コロナもプロミネンスも見えず、見えないはずの星も見えず。
皆既中

それでも太陽と月と地球と自分が一直線で繋がった時、そのスケール感が肌で理解できた。
畏怖。歓喜。失意。高揚。あらゆる感情が混ざり合い、はじけて叫びそうになるのをこらえながらその場の空気を味わい続けた。その永遠にも一瞬にも等しい3分が過ぎ、第3接触
月の陰から再び姿を現すと、ほんの一片であっても太陽は強烈に自己主張をする。

ものの数分もしない内に辺りは昼の姿を取り戻した。
皆既後

その後はいよいよ雲が濃くなり、周囲も祭りの後といった空気。落胆する大人たちを尻目に子どもたちの遊び声が元気よく響いていた。
撮影を諦めて先ほどの奇跡を反芻しつつボーっとしていると、第4接触*2。そのままボーっとしてても仕方ないので機材を撤収。

名瀬

太陽ヶ丘公園周辺を散策して時間を潰しても良かったけど、折角なのでバスに乗って町の方へ行ってみた。昨晩は暗くて分からなかったけど、島の南北を繋ぐ幹線道路は海辺あり山中ありと起伏に富んでいた。
沿線風景

道路は日食を見に来たと思しき方々の車で大渋滞。中々進まないものだからボーっとなったけど、途中、鶴瓶の家族に乾杯で出てきた龍郷町役場を見かけた時は目が覚めた。
それはともかく、行く手には厚い雲が見えて名瀬付近まで来るとスコールのような大雨に遭遇。これが北上したらテント水没確定だなぁと思ったりしたけど、とんぼ返りする手段が無いのであきらめの境地。郵便局前でバスを降りると、まだ雨が強かったので屋根付きのティダモール中央商店街へ避難した。商店街の人出はそこそこで、至るところに日食関連のポスターや幟が。
商店街

昼間から降ろされたシャッターの上に張られたポスターを見ると何とも言えない気持ちになる。このチャンスを上手く振興に繋げることが出来ればいいんだけど。
ポスター・シャッター

昼飯はレストラン瀬里奈で奄美名物の鶏飯。鶏肉や卵の細切りをご飯の上に乗せ、鳥ガラスープをかけて食べる。
飛び上るほど旨い!ってわけではなかったけど、疲れた体に染み込む味。美味しかった。

ご飯の後は土産を探しつつ商店街をぶらぶら。フリースペース的な場所で奄美の歴史に関する展示があったんだけど、恥ずかしながら奄美が戦後7年ほどアメリカ占領下にあったことを初めて知った。特に学校で習った記憶は無いんだけど、それにしても旅してる土地の事を知らないってのは頂けない。まあこんなことが多々あるんだけど。当てのない旅ってのもそろそろ卒業すべきかも。
その後雨がやんだので、商店街を抜けて教会を覗いたりしつつ港の方まで散歩。
青い鳥を見かけてすわルリカケスかと思ったらイソヒヨドリ♂だった。
青い鳥
*3
しばらく港から商店街の辺りを適当に歩きまわった後、路線バスに乗ってキャンプ地へ帰還。
途中綺麗に夕陽が見えて、あと8時間ぐらい早ければなぁと思ってしまっても無理はないでしょう。
夕陽

再びキャンプ地

改めてキャンプ地の公園入り口。
歓迎してくれるのは嬉しいけどコロナとか見えなかったんですよへへへとか考えつつテントに戻る。
太陽ヶ丘公園入り口

先ほどの雨が南下した形跡があったので心配だったけど無事だった。拾う神あり。
テント

晩御飯を軽食で済ませ、早朝の出発に備えてテントの中で休んでいると、遠くの方で雷鳴が聞こえて気温も下がって来た。これはやばいぞという予感に躊躇しつつも、どうせ後で畳まなきゃいけないんだしということでテントを畳んでダンボール箱に詰めて体育館の待合スペースで朝まで待機。写真を見直したり本を読んだり携帯をいじったりして時間を潰していると、夜半過ぎになってから遠くの雷雨がやってきた。せっかくだから七転び八起き、稲光が撮れないかなとチャレンジしたけど失敗、七転び七起き。それはともかく、時折強風が吹き付ける中々派手な雨で、テントが水没して避難してくる人が多数いた。こういう時は一人だと身軽に動けるからいいなと思ってしまう。そうこうする内にバスの出発時間が来たので、ひょいと乗りこんで出発。

*1:ここに至ってようやく、以前種子島に行った時、カメラマンの友人が一日かけて撮影場所を探していた理由に気がついた。ロケ地の下調べは入念にすべきなんだね。

*2:この時ルリカケスのような鳥を見たんだけど、あれは何だったんだろう。イソヒヨドリの見間違いか?

*3:写真だとちょっと暗くなってるけど、本当に綺麗な青色をしていた