「ドイツW杯 世界のスーパースター 〜祖国のために旋風を〜」

NHKスペシャル
アンゴラのアクワ、ウクライナシェフチェンコ、ドイツのバラック。彼らにスポットをあてて、三人三様、三国三様のW杯にかける思いを掘り下げる特集。いい特集だった。
最初はアンゴラアンゴラといえば内戦で傷ついて、そこから復興して苦難の末に初出場を掴んだ…ということを単に知識として知ってはいても、実際に選手が語るのを見ると、はるかに説得力がある。
今回取り上げられたアクワという選手はカタールとか国外でプレーしてるけど、国に帰るたびに、友人のダニエルさんに会いに行っているらしい。その友人は、内戦終了直前に、指を失ったりしたせいで選手生命を絶たれている。アクワは、彼より4歳若かったから、徴兵を逃れてサッカーを続けられた。たった4年だけど、大きな4年の差。一人は成功を掴んで、一人は掴み損ねたけど、お互いに友情が続いてるのが素晴らしいと思う。二人は小さい頃、一緒にプレーしていてダニエルが上げた右からのクロスをアクワが決めるという。その頃強かったナイジェリアにあやかって“ダニジェリア”という合言葉も作ったりしていたらしい。ダニエルがそう叫ぶとアクワがそれにあわせて動くといったような。
W杯予選では、そのナイジェリアと同じグループに入って、アクワが右サイドから送られたグラウンダーのパスを受けて、ニアをぶち抜いて見事に勝利。予選突破を果たしたルワンダ戦でも右からのクロスにヘディングであわせてゴールを決めた。そして試合後のインタビューでアクワはこう語った。

「責任を果たした。やり遂げた。みんなの勝利だ。
 アンゴラで応援してくれた友よ、一緒に喜ぼう!」

どうにもいい言葉じゃないか。ここに文字テロップを出して、吹き替えを被せなかったNHKはGJ。離してる意味は分からないけど、感情は伝わってくる。そしてさらに今回のインタビューではこう語る。

「私の人生を変えたあのゴールは、自分だけのものではありません。子供の頃、ともにワールドカップを夢見てボールを追った仲間たち。そしてダニエルのように、内戦のためにサッカーを諦めてしまった幼馴染たち。みんなの得点なんです」

ここで番組はシェフチェンコバラックの特集を経て再びアンゴラの話に戻る。アクワが故郷の仲間に呼びかけて、アンゴラのW杯初出場を記念した試合を開催した話を紹介。友人のダニエルも、15年ぶりにプレーした。昔のように“ダニジェリア”と叫びながらアクワに右クロスを送る場面もあった。ここでアクワが決めれば最高だったけど、そう上手くはいかないか。
それはともかく、こんな特集を見せられたらアクワ選手には本大会で活躍して欲しいと心から思う。旧宗主国ポルトガルに勝てたら最高だけど、それを望むのは酷か。その他メキシコ、イランと同じグループで厳しいけど、さらに大きなクラブでプレーするチャンスを得てもらいたいな。福岡に来てくれたら嬉しいけど、残念ながら十分なお金は払えないだろうなぁ。